大切なものを選ぶこと
「美紅、大丈夫??」
男性陣と盛り上がっている真希と加奈を置いて、私と由美子は何とか席から逃走してトイレなう。
そんなには飲んでないけど、もともとお酒が強くない私はかなりお酒が回ってしまっている。
「タクミさん、完全に美紅のこと狙ってるから気をつけなね」
「…うん……」
「あの人、自意識過剰なタイプだし美紅のこと略奪しようとか思ってそうだから注意ね!あたしたちもなるべくフォローするから!」
「ごめんね、ありがと由美子」
「んーいいのいいの。あんまりひどいとさすがに美紅の彼氏さんに申し訳なくなってくるし」
そう言って笑った由美子は少しだけ自分の彼氏に対して罪悪感を抱いてるみたいだった。
私も…これ以上、他の男性に口説かれたり触られたりするのは秋庭さんに対して申し訳ない。
もう飲まないようにして早めに秋庭さんに迎えに来てもらおう…。
──「美紅ちゃん!こっちこっち、俺の隣空いてるから!」
「えータクミさーん、あたしじゃダメなんですか~?」
トイレから戻るとすぐにタクミさんに声を掛けられた。
由美子が咄嗟に庇ってくれたけど…
「いやー俺、美紅ちゃんのこと本気で狙うからさ、ごめんね由美子ちゃん!」
と言われてしまって、タクミさんの隣に座ることになってしまった。
流石にこれ以上は…と思っていたのが顔に出ていたらしく、他の男性と話していた加奈と真希も助け舟を出してくれたけど、タクミさんは全く意に介していない。
「あの…タクミさん、私…彼氏いるのであんまり近いのは…」
「えー、でも俺の方がぶっちゃけいい男じゃない?」
腰に回された手をやんわりと断りながら言うと、余裕たっぷりに返された。
ふざけるな!お前なんかが秋庭さんよりいい男なわけあるか!と声を大にして言いたい…。
「俺さ、〇〇商社からの内定もらったから高給取りになるし、身長180あって読モもやってるから男としてはかなりいい条件だと思うんだけど?大事にするよ?美紅ちゃん」
ドヤ顔で顔を寄せてくるタクミさんを一発殴りたい衝動をグッと抑える。
あなたが秋庭さんに勝ってるとこなんか一つもないわ!
彼氏持ちを口説いてる時点で男が廃ってる!