大切なものを選ぶこと



「あ、はい。今出ますね。お会計は?」




店員さんが登場したのでこれ以上はナルシストに構っているわけにもいかない。




最悪、こいつは放置して逃げよう。うん、そうしよう。




男性幹事がとりあえずお金を立て替えて払おうとしてくれた。





だけど…





「あ、お会計は結構ですよ」




と店長さんに爽やかすぎる笑顔で言われてしまう。





みんなの訝し気な視線が店長さんに向く。




この居酒屋は結構いい値段することで有名だし、この人何言ってんだ…?






「弘さんに皆様からのお代は受け取らないように先程言われましたので」





「弘さん?」





「これは失礼。当店のオーナーである秋庭より、皆様のお代は受け取らないよう申し付けられております」






めっちゃ爽やかな笑顔で言ってるけど……まじか。





美紅…あんた、どんだけ凄い人と付き合ってんのよ…。







───てことで、美紅の彼氏様こと秋庭さんに結局は全部ゴチになってしまった。




さらに…帰り際、





「この辺一帯の飲食店は全て弘さんがオーナーですので、発言には気を付けた方がいいですよお客様」





店長さんは先程までの人当たりの良い笑顔から一変した表情でタクミさんを見た。





「弘さんは気前のいい気さくな人だから、男女関係なく好かれるんだよ。この辺りで迂闊なことを言うと...知らない間に敵を作ることになりますよ?」






例えば…俺とかね…







「俺は弘さんの大ファンなので一つだけ…。あの人、京都にある旧帝大出身だから、顔や経済力だけでなく…頭脳も君より遥かにいいよ。それに、人としてのカッコよさもね」






そこまで言われて、さすがにナルシストも意気消沈した。





うん…だって…勝ってるところ一つもないもんね…




秋庭さん、日本で1位2位を争うくらい頭のいい大学出てるんだ…半端ない…。







ちなみに、私たちは秋庭さんが手配しておいてくれたタクシーで帰路についた。




運賃も何故か、支払い済みになってた…。




秋庭さんはいったい何者なんだ…






とりあえず、明日美紅に電話して色々と聞いて、お礼も言わなければ…。




< 92 / 231 >

この作品をシェア

pagetop