大切なものを選ぶこと


─高巳side─




カタカタカタカタ…




「………………。」





カタカタカタカタ…




「…………。」






秋庭組の事務所内にある執務室にパソコンの音…否、どっかの馬鹿上司の貧乏揺すりの音が響く。




この馬鹿上司は好きな女の為にタバコをきれいさっぱり止めたので、フラストレーションを紛らわす手段がないらしく、耳障り極まりない貧乏揺すりが室内に広がる。








カタカタカタカタ…






「あーもう!!うるせーよ弘!」




仕事が始まってからずっとこの調子の馬鹿上司にいい加減、堪忍袋の緒が切れた。





「ん?あぁ…すまん」





「そんなに心配で嫉妬駄々洩れにするくらいなら合コンなんか行くなって言えばよかったんじゃねーの?」





「まぁ…そうなんだが…」





「付き合ってる人の前で常にカッコつけてる必要なんかないだろう。少しくらい嫉妬で狂ってるダサい姿を見せた方が人間らしくていいぞー」





「俺かなり嫉妬深いし独占欲強いだろ…嫌がられたり呆れられたりしたらな…」





「嫉妬と束縛は紙一重よ。過度な束縛さえしなければ嫉妬は隠さなくていいんじゃないの?全く嫉妬されないってのも恋人からしたらキツイだろ」






というか…お前はいい加減、真面目に仕事しろや!




もともと今日は繁華街周りと売り上げ回収の日だったのに…『美紅のこといつでも迎えに行けるように事務仕事に変更だ』とかなんとか言って、無理やり予定を変更したのはどこのどいつだ…





弘の独占欲が強い事なんかわかりきったことなんだから、カッコつけてないで美紅ちゃんにもそのダサいところを早く見せてこい。




あの子はお前がどんなにダサい妬き方をしようが、ちゃんと受け入れてくれるさ。






それと…




「もう落ち着いてきただろう。そろそろ、おやっさん含め組に面通しした方がいいぞ」





「ん、わかってる」





弘が表で堂々と美紅ちゃんとイチャつけないのは親父に面通ししていないからだ。




秋庭組として美紅ちゃんを弘の女と認知すれば、少なくとも護衛が付く。




そうすれば弘の心配も少しはなくなるだろう。






さて、いい加減に真面目に仕事しようや。と思ったその時──





弘の携帯が着信を告げ、通話を終えた弘は秒速で事務室を出て行った。







あの野郎!仕事してけや馬鹿若頭!!



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