王太子の揺るぎなき独占愛
「ああ。ほしいものを堂々とほしがることは悪いことじゃないと態度と言葉で教えてくれたからな。図々しくて面倒くさいが、あいつが必死にステファノ王子との結婚を望む姿を見て俺も……」
そこまで話したレオンはいったん口を閉じ、サヤの顔を優しく見つめた。
「お前は森で俺を見かけるとすぐに背を向け去っていったな」
「あの、それは」
サヤは首をかしげた。ジュリア王女の話をしていたというのに、どうして今そのことを口に出すのかわからない。
「何度も背中を見せられて、俺はどれだけ嫌われているんだと落ちこんだな」
「そんなこと、ありません。まさか嫌っているなんて、誤解です」
レオンの落ち込む声に、サヤは慌てて反論した。
「嫌うわけがありません。森では殿下がおひとりになりたいのではないかと思っていただけで」
サヤはだらりと下げたままにしていた両手をレオンの胸に置き、体を寄せた。
「私も、殿下の近くに行き、声をおかけしたかったのです。ですが、王太子殿下に気安く声をおかけするわけにもいきませんし」
「本当か? それにしてはあっという間にいなくなっていたな」
眉を寄せたレオンに、サヤは必死で首を横に振った。