王太子の揺るぎなき独占愛
相変わらず心配そうな顔を見せるサヤに、レオンは苦笑した。女性に踏まれるくらいどうということはないのだ。
「心配しなくてもいい。それに騎士団にいたときには訓練でイザベラに踏みつけられたりぶつかられたりすることも多かったんだ。サヤと同じ女性とは思えないほど力いっぱい踏みつけられて、訓練だとはいってもムカつくことも多かった」
男性騎士と女性騎士が一緒に訓練をする機会もあり、組み手や剣の練習で、思いがけず互いの足を踏みつけたりぶつかったりということはよくあることだ。
イザベラに技を教えるときなど、しょっちゅうだった。
「イザベラよりもずっと軽くて小さなサヤに踏まれても、なんともないから気にするな」
レオンの言葉に、サヤの体が小さく揺れ、表情が曇った。
「おまけにイザベラはダンスのときにもまるで戦いを挑むように踊るから、何度も踏まれたし……足の甲に青あざを作ったことなんて数えきれないんだ」
王家主催の舞踏会で踊るレオンとイザベラの姿は有名で、美しいふたりを見るために舞踏会に出席する貴族は多かった。