王太子の揺るぎなき独占愛
「今は忙しいだろうし気苦労も多いんでしょう? 痩せるのは仕方ないか。食べられるものだけでもちゃんと食べて頑張って」
「うん。ありがとう。このクッキーもちゃんと食べるね」
「今一枚食べてみたら? 相変わらずのおいしさに、疲れなんてふっとんじゃうから」
ほらほらというように、ルイーズは視線で促す。
サヤはくすりと笑い、クッキーを一枚手に取った。
「うわ、バニラビーンズのいい香り」
サヤはその香りを楽しみながらクッキーを口にした。
バターがたっぷり使われているおかげでかなりしっとりしていて、甘みも強い。
「なんだか懐かしい。ほんの少し前まではしょっちゅう食べてたのに」
サヤはもう一枚口にした。
学校帰りや休日、ルイーズをはじめ、学校の友達と一緒に食べたころを思い出す。
真面目でおとなしい性格のサヤは、勉強もこつこつと努力を重ねるタイプで、成績もよかった。
面倒見のよい性格も手伝い、サヤの周りにはいつも友達が多かった。
「そういえば、サヤの初恋は王太子殿下だったわよね」
ルイーズは足元の籠を拾い上げながらニヤリと笑った。
「森で殿下を見かけたあとは、いつもニコニコと機嫌がよくて、学校の宿題もすぐに見せてくれたもん」
「え? そ、そうだったっけ……」
サヤは口にしていたクッキーに小さくむせた。
「それは、その……誰だって、憧れるっていうか、格好いい王子様にみとれるというか、その」