王太子の揺るぎなき独占愛
サヤは顔を赤くし、しどろもどろに答えた。
同い年ということもあり、森の仕事の中でも同じ仕事を与えられることが多かったふたり。
ルブラン家の娘の義務として森での仕事を渋々していたルイーズは、サヤが生き生きと楽しそうに仕事をするのが信じられなかった。
ルブラン家に生まれたからといって王家の森に自分の時間の多くを費やすことに疑問も感じていた。
サヤのように、義務だと思わず生きがいに感じられればいいのにと思っていたくらいだ。
「あのころ、私の仕事を何度もサヤが代わってくれたよね。雑草を刈るときも、私があまりにも不器用だか見てられないって言ってさっさとやってくれたし」
「ああ、そんなこともあったね」
「ふふ。今思えば、あれだけこの森で過ごしてたのって、王太子殿下に会いたかったからでしょ? あらあら、照れない。いいじゃない、初恋が成就して王妃様になれるんだから」
ルイーズは朗らかに笑うと、サヤの手の中からクッキーを一枚取り口に入れた。
「私たちの年齢から考えて、次期王妃になるなんて無理だと思ってたけど。あ、私はもちろんそんなこと望んでなかったけど。良かったね。初恋のひとと結婚できて」
ルイーズの心からの声に、サヤは照れながら、小さく頷いた。
王家の森での仕事は、天職だと思えるほど楽しく、いつも心を弾ませながら働いていた。
天候次第ではつらいときもあり、思うように薬草が育たないときには眠れないほど悩むときもあったが、ルブラン家に生まれて本当によかったと思っていた。
サヤにとって、ルブラン家の義務は、喜びだったのだ。
ルイーズはサヤの赤い顔をのぞきこみ、言葉を続けた。
「私は初恋のひとと結婚できて、今とっても幸せ。私なんかとサヤじゃ立場がまったく違うけど、サヤが初恋のひとと結婚して、幸せになれるように祈ってるから」
「……うん」
ルイーズは初恋の男性と結婚し、ふたりで店を切り盛りしている。
その合間に王家の森の仕事を続けていて忙しいはずだが、好きなひとと結婚した今、とても幸せそうだ。
「ルイーズ、すっごくキレイになった」
視線をそらし、うつむいたサヤに、ルイーズは首をかしげた。
「どうしたの?」