王太子の揺るぎなき独占愛



「イザベラ……」

 落ち込むときにいつも頭に浮かぶのは彼女の綺麗な姿だ。

 レオンが社交の場に現れるときにはいつもイザベラを同伴していたと聞く。
 なにもかもが完璧な彼女と比べられても、太刀打ちできないとよくわかっている。

 それに、どうしても敵わないのはレオンとイザベラがともに過ごしていた時間だ。
 騎士として訓練を共にし、ジュリア王女の警護担当として王宮に出入りしている彼女は王家の誰からも好かれ、認められている。
 レオンもイザベラに対してはかなり気安い態度で接している。

 突然王妃に選ばれ、レオンとの関係が始まったばかりのサヤには、ふたりの間に割って入ることなどできはしない。

 それなら、努力を重ね、完璧な王妃になろうと決めたのだが。

 王宮を訪れるイザベラの凛々しい姿を見かけるたび落ち込み、レオンと親しげに言葉を交わす姿を見れば胸を痛めている。

「イザベラ?」

 サヤの小さな声を聞いて、ルイーズは眉を寄せた。

 森の中にいるときにはいつも生き生きとし、自信を感じさせる笑顔を浮かべていたサヤだが、今の彼女はまるで別人のように弱々しい。

「もしかして、王太子殿下とイザベラになにかあると思ってるの?」

 ルイーズがため息まじり問えば、サヤはピクリと体を震わせ唇をかみしめた。
 そして何度か首を横に振った。

 まさかふたりの間になにかあるとは思っていないが、親しすぎる様子を見れば、レオンに自分は必要なのだろうかと考えてしまうのだ。

 サヤの悩む姿にルイーズは「あらら」と言って軽く息を吐いた。


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