王太子の揺るぎなき独占愛




「イザベラはルブラン家の顔ともいうべき女性だもんね。誰もが振り向くキレイな容姿と女性騎士としてのいくつもの功績。ジュリア王女様の警護として王家にもつながりが深い。おまけに、家族に縁のない子どもたちが安心して暮らせる施設を運営するほど愛情深い」
 
 数え上げるように話すルイーズに、サヤはうなずいた。
 
 いまさら言われなくてもイザベラのことならサヤもよくわかっている。
 ルブラン家の本家出身という背景に頼ることなく自分の力でしっかりと生きているイザベラは、同じルブラン家の人間としても誇りに思う。

「おまけに性格もよくて優しい。絶対敵わない」 

 サヤはそう言って肩を落とした。
 どう頑張ってもイザベラのようになれるわけがないとわかっているが、直接言われるといっそう落ち込んでしまう。

「わかってるから、せめて素敵な王妃にならなきゃと思って頑張ってる」

 サヤは手の中に残っていたクッキーを勢いよく頬張った。甘くて懐かしい味は、とことん落ち込んだサヤの心の中に溶けていく。

 次々とクッキーを食べるサヤを、ルイーズは面白そうに眺めている。
 そんなルイーズにかまうことなく、サヤは言葉を続けた。

「結婚式のあとの舞踏会で披露するダンスは完璧に踊れるようになって、レオン殿下に誉められたし、ファウル国特産のワインの銘柄は、ひと口飲むだけでちゃんと言えるようになった。それに、レオン殿下の大好物のレモンタルトは王宮のシェフに教わって、おいしく作れたし……」
 
 サヤは拗ねた口ぶりでつぶやき、顔をしかめた。

「だけど、やっぱり殿下はイザベラと仲がいいから……」



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