王太子の揺るぎなき独占愛



 王女ジュリアは薬が嫌いで、体調を崩したときにもなかなか口にしようとしない。

 どれほど熱が高くても、ひと晩寝れば治ると言っては頑なに薬を拒む。
 そんな彼女が渋々ながらも薬を飲むときは、相当体がつらいときだ。

 そう考えれば、今も薬を拒むということは、たとえ熱が出て寝込んでいても、まだ大丈夫だということだろう。

「とにかくちゃんと食べて、体調を戻してもらわないと」

 ジュリアは来月に迫った結婚の準備が忙しくて体調を崩したのだが、日ごろから好き嫌いも多く、偏った食事をしていては、それは当然だろう。

 これまで何度かジュリアのために薬草を煎じて届けたが、ジュリアはなかなか飲もうとしない。
 今回もベッドに潜り込んで、断固拒否しているそうだ。

「じゃあ、切り分けてジュリア様にお持ちしようかな」

 とにかく食べて、体力をつけてもらわなければと、サヤはパイを切り分けた。

「温かい紅茶も用意しましたので、侍女に運ばせましょう」

 ハンクの言葉に、サヤはうなずいた。




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