王太子の揺るぎなき独占愛
勢いよく食べるジュリアの姿にサヤはホッとした。
これだけ食欲があれば、体調もすぐに戻るだろう。
薬もちゃんと飲めば一層早く回復するはずだが、ジュリアが素直に飲むとは思えない。
「ジュリア様、ゆっくりとお食べください。そこにあるパイはすべてジュリア様のものですから」
ジュリアは口の周りにパイの欠片をつけながらもぐもぐ食べている。
まるで急いで食べなければならないかのように、必死だ。
「あ、落ちましたよ」
ジュリアの膝の上に、大きな欠片が落ち、サヤが駆け寄って拾った。
欠片を侍女に渡すと、サヤは間近で見るガウンの色合いに再び目を奪われた。
鮮やかな色が印象的で、それだけに目を奪われてしまいそうだが、よく見れば規則的な模様が編み込まれている。
原色が何色も使われ、紋章のような模様が続いている。
「これは、どなたが編まれたのですか?」
問いかけるサヤに、ジュリアは口の中にあったパイをのみ込み、にっこりと笑った。
「もちろん、私が編んだのよ」
「え、ジュリア様が、ですか?」
驚くサヤに、ジュリアはうれしそうに胸を張った。
「一週間くらいかかりきりでね。おとといの晩ようやく完成したと思ったら、体調を崩しちゃって。徹夜続きだったから疲れてたのよね。夕べいっぱい寝たし、洋ナシのパイも食べたからもう大丈夫よ」
「徹夜……」
「そうなの。ようやく望み通りの毛糸ができて、うずうずしちゃって。この一年は、思うような色がなかなか出せなくて、染色の職人と一緒に工場であーでもないこーでもないって四苦八苦してたから、うまくいったときにはみんなで抱き合って大喜びしちゃった」
「はあ」
「うれしくてついつい編み続けてしまったの。あ、ステファノ王子にもおそろいで作ったから、本当、疲れたわ」
疲れたと言いながらも、満足そうに話すジュリアはとてもすっきりとした表情を浮かべている。
よっぽど編み物が好きなのだろう。