王太子の揺るぎなき独占愛



「あ、残りのパイ、あとで私が食べるから、絶対にお兄様にはあげないでね」

 紅茶を飲み干したジュリアが、強い口調で表情を引き締めた。
 ジュリアのここまで真面目な顔を見ることはめったにない。
 自分の好きな物に対してはとことん貪欲で容赦なく突き進むその姿に、サヤは見とれそうになった。

 王家は美形ぞろいだが、ジュリアの美しさは格別だ。
 絹糸のように滑らかなブロンドの髪を腰まで伸ばし、歩けばつややかに波打ち誰もが振り返る。
 小さな顔にバランスよく配置された大きな目とすっとした鼻。
 ほどよく厚みのある唇は何もしなくても赤みがさしている。
 強い意志を持つ表情で見つめられれば、誰もがジュリアのとりこになってしまう。

 生まれながらの王女とはジュリアのことだと、会うたびサヤは思う。

 レオンが言っていたように、生まれてからずっと王女であり、どうあれば自分が王女たるべく生きられるかを自然に身に着けてきた彼女と、突然王族の仲間入りをすることになったサヤでは、見た目も中身もまるで違うのだ。
 改めてそれを見せつけられたような気がして、サヤはうつむいた。

 うつむいても、視界に入るのは極彩色のガウン。
 サヤには決して作ることのできないもの。
 
 イザベラに対する劣等感に加え、ジュリアへの羨望。
 サヤは、沈む気持ちをどうすることもできず、ガウンの色鮮やかな模様をぼんやりと見つめた。

「そんなにこのガウンが気に入ったなら、編んであげるわよ? そうね。結婚祝いにお兄様とおそろいのケープを編んであげる」

 じっとガウンを見つめるサヤに、ジュリアは明るい声をあげた。


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