王太子の揺るぎなき独占愛


「城下の子どもたちにもよく教えていたんです。だから大丈夫ですよ」
「子ども……よりも才能がない自信があるんだけど。でも、頑張るから教えてほしい。あの、あの……。実は、ステファノ王子もこのパイが好きなのよ。だから、作ってあげたいし……」

 ジュリアは膝の上に両手を置き、真っ赤な顔でうつむいた。

 彼女は子どものころ隣国に視察に出向いたとき、ステファノ王子にひと目惚れをした。
 ステファノ王子もジュリアの美しさに惹かれ、その後彼女の人柄にも気持ちを奪われたのだ。
 それ以来互いの恋心を大切に育ててきたふたりだが、婚約までには紆余曲折があった。

 両国の国境をまたいだ場所で発見された鉱脈を公平に管理するという取り決めの証として結婚が認められたが、それがなければ大国同士の結婚だ、周辺国への影響を考えれば許される見込みはなかった。

 レオンが両国を行き来し、ジュリアの願いを叶えようと力を尽くしたのも大きいが、ジュリアとステファノの強い思いが婚約を実現させたのだ。

「そういえば、ステファノ王子はマカロンも好きなんだけど……」 

 ジュリアの上目遣いの言葉に、サヤは苦笑した。

「はい。私も大好きですし、作れますよ。パイとマカロン、両方チャレンジしましょうか」
「うん、頑張るからよろしくね。あ、お兄様が知ったらきっとからかうから、内緒にしておいてね」
「ふふっ。わかりました。内緒にしておきます」

 ジュリアの必死な様子に、サヤは笑いをこらえた。

 すると、ジュリアはハッとしたように両手を叩いた。

「ねえ、そろそろお兄様が即位式のときに着る軍服が出来上がるころよね」
「あ、それは、私にはわかりませんが……採寸のときには私も同席しました」

 婚約してすぐ、レオンとサヤは即位式で着る軍服とドレスの採寸を済ませている。

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