王太子の揺るぎなき独占愛
「そんな深刻な顔をしないでよ。愛するひとを支える結婚が、母国の平和にもつながるってなんだかお得な感じでしょ? それに、私って意外に強いのよ。少々のことじゃへこたれないもの。たとえステファノ王子を狙ってるラスペードの貴族の娘がいたとしても、蹴散らしてやるんだから」
ジュリアは大きく笑った。
「ジュリア様……。ステファノ王子はジュリア様に夢中ですから、他の女性のことなど目に入りませんよ」
サヤは泣きそうになるのを我慢しながらそう言った。
「もちろんそうよ。ステファノ王子は、私のことが大好きで仕方がないの。早く結婚式を終えて、あれやこれや……ふふ。いろいろ、楽しもうねっていつも言ってるわ」
決して弱音を吐かないジュリアは、たとえ体調が悪くとも、そしてパジャマ姿でも、王女然としていて美しい。
きっと、王族としての自覚が根付いているからだろう。
自分もそうなれるだろうか。
サヤは不安でたまらなくなった。
ジュリアのように凛々しさと強さをあわせもつことができるだろうか。
国の未来を考え、戦のない世を続けていくため、レオンを支えていけるだろうか。
心の中で何度も繰り返すが、すぐには答えを出せそうもない。
「サヤが不安なのは刺繍だけじゃないと、わかってるんだけど」
サヤの心を察しているような、ジュリアの優しい声が部屋に響いた。
「お兄様ともこれから夫婦としての関係を築いていかなきゃならないし、王家のこともたくさん勉強しなければならないと思うけど、まずはビオラの刺繍から、始めましょう。ひと針差すごとに、きっと気持ちは落ち着くし強くなると思う。なにより、お兄様が喜ぶわ」
「……そうでしょうか」
「もちろん。だってお兄様は自ら望んでサヤを……。いえ、私が口にすることではないわね。とにかく、王妃としての最初の仕事だもの、頑張りましょう。私がここにいる間にみっちり教えてあげるから、大丈夫よ」
力強い言葉とともに胸を張るジュリアに、サヤは小さく笑った。