王太子の揺るぎなき独占愛
「その代わり……」
ジュリアは椅子から立ち上がり、サヤの前で両手を合わせた。
「洋ナシのパイが上手に焼けるように、いろいろ教えてね。ステファノ王子が喜ぶ顔が見たいの。だから……」
一転して弱々しい声を出すジュリアは、華奢な体の可愛らしい王女そのもので、国の未来や王族の務めなど考えたこともないように見える。
しかし、その柔らかな物腰の裏に、強さが隠されていることを、サヤは知った。
「おまけにマカロンだったら軽く十個は食べちゃうくらい大好きなのよ。私が上手に作ったら、それこそ百個でも食べてしまいそう」
ジュリアはステファノを思い、頬を染めた。
恋する女性そのものの姿を見て、強張っていたサヤの心がほぐれていく。
「パイでもマカロンでも、ご希望でしたらプリンの作り方もお教えします。ステファノ王子だけでなく、ラスペード王国の王家の方々がおいしいと言って取り合いになるほど上手に作れるようになるまで、私も頑張ります」
両手で握りこぶしを作り、サヤは強い声でそう言った。
ジュリアも唇をひきしめ、ぎゅっと握りこぶしを作ると、覚悟を決めたようにうなずいた。