王太子の揺るぎなき独占愛



 王城の南側に、ジュリアの作業部屋と呼ばれる広い部屋がある。
 日差しが燦々と降り注ぐ明るい部屋にはファウル王国の特産でもある糸をはじめとしてたくさんの布が用意されている。
 布や糸だけでなく、キレイなボタンやビーズ、そしてレースなどもたくさん揃っていた。
 
制作途中のドレスがボディに着せられていて、ジュリアが洋裁にも本気で取り組んでいると知り、サヤは驚いた。

「それにしても、すごい量の布と糸だわ……」

 部屋には一生かかっても使い切ることができそうもない量が保管されている。

 その中でも光沢豊かな極上のシルクの布は、ファウル王国でしか作ることのできない繊細な仕上がりだ。
 手触りの良さは格別で、ウェディングドレスに使われることも多い。

 サヤのウェディングドレスもこのシルクが使われるのだが、国内で一番腕のいい織物職人が織り上げたシルクが用意された。

 棚にキレイに並べられているシルクの手触りを楽しみながら、サヤはそろそろ出来上がるというウェディングドレスを思い、微笑んだ。

 部屋の壁一面に据え付けられている棚には、他にもたくさんの布や毛糸、そして刺繍用の糸が並んでいる。
 最近ジュリアが職人と染色に励んだという毛糸を見つけ、彼女が編んだガウンの華やかさを思い出す。

「あれほど大きなものは編めないけど、せめてマフラーくらい編みたいな……」

 原色が目に鮮やかな毛糸の棚を通り過ぎると、刺繍用の糸や針、それ以外にも刺繍に必要なものが並ぶ棚を見つけた。

「これだわ」

 色ごとに丁寧に仕分けられた糸はかなりの量で、天井まである棚にぎっしりと置かれている。
 隣の棚には針もあり、部屋の真ん中にある作業台を使えばすぐにでも刺繍ができる。

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