王太子の揺るぎなき独占愛
ジュリアがこの部屋で作った作品の多くは他国に売られ、どれも高く評価されている。
ラスペード王国に嫁ぐ日が近づき、この部屋の物も花嫁道具とともに運ぶことになっていたのだが、ジュリアを溺愛するステファノは、自分たちが住む城にもジュリアのために作業部屋を用意し、この部屋にある以上の量の糸や布を準備したらしい。
愛するジュリアのためなら何でもすると口癖のように言っているそうだが、それは嘘ではなかったのだと、サヤは驚いた。
「ジュリア様、本当に愛されているのね」
サヤは、そのことを照れくさそうに話すジュリアの真っ赤な顔を思い出した。
「ジュリア様は、絶対に人質なんかじゃないわ。でも、あまりにも愛されすぎて、束縛されちゃうかも」
サヤは遠目からその姿を見たことがあるステファノ王子を思い出し、クスクス笑った。
ジュリアの腰を抱き、顔を寄せて楽しそうに話す姿はジュリアへの愛に満ちていた。
「溺愛どころじゃなかったわ……」
他国に嫁ぐのだ、決して楽しいことばかりではないだろうが、ジュリアならきっと幸せになれるはずだ。
サヤは明るい気持ちで棚から刺繍糸を一束手に取った。
濃い紫のその糸は、紫のビオラの刺繍にぴったりだ。
グラデーションを作るために、少しずつ淡く変化する色も手に取る。
艶のある刺繍糸はとても柔らかで繊細だ。
「糸を見るだけで緊張するんだけど……」
刺繍用の針や針山も探し出し、サヤはため息をついた。