王太子の揺るぎなき独占愛
レオンとイザベラは向かい合い、言い争っている。
サヤはしゃがみ込んだままふたりの様子を見つめた。
強い口調で言い争っているふたりの間には、なんの遠慮もない。
サヤに背を向けているイザベラの表情は見えないが、レオンは困り切った様子で彼女になにかを必死で頼んでいる。
戸口で向かい合うふたりの距離がそれほど近くないのが救いだが、ただでさえレオンとイザベラの親しさを知って寂しさを感じているサヤは、ひどく胸を痛めた。
それに、意味深な会話はサヤがふたりの関係を疑うには十分だ。
サヤは息を詰めたままうつむき、目を閉じた。
「イザベラには申し訳ないと思うが、そうするのが一番だとお前もわかってるだろ?」
「はいはい。自分の気持ちですら長い間口にすることができなかった見かけだおしの王太子様だもん。私のことなんてどうなろうとかまわないわよね」
「そんなこと思ってるわけないだろ。長い付き合いなんだ、大切に思ってるし信頼もしてる。だから、頼む」
荒い口調のイザベラをなだめるレオンの声を聞いて、サヤは唇を引き締めた。
いつも遠目から見ていただけで、会話を直接耳にしたことはなかった。
レオンの口からイザベラを大切に思う気持ちを聞かされて、思っていた以上にショックを受けた。
目の奥が熱くなり、声を漏らしそうになるのを必死でこらえた。
そして、口にできないレオンの気持ちとはなんだろうかと、落ち込んだ。
「あーあ。もう、そうやって頼めば自分の思い通りにできるってわかってるんでしょう? 本当、ずるい」
大きなため息とともに、面倒くさそうなイザベラの声が響いた。
「ずるくてもいいだろ。結局、俺はイザベラに頼るしかないんだから」
「あのねー。私にも私の人生ってのがあって、いつまでもこうしていられないのよ。わかってる?」
「わかってるよ。これが最後で最大の頼みだ。それに、知ってるぞ……ラスペード王国の第二王子が……」
「ちょっ、ちょっと、どうしてそれをレオンが知ってるのよ」