王太子の揺るぎなき独占愛
イザベラの焦った声に、サヤは思わず顔を上げた。
レオンを前になぜか慌てているイザベラの横顔は、赤く、照れているようだ。
乗馬服を着ているスラリとした姿は女性ながらも凛々しく、サヤは見惚れそうになる。
同じく乗馬服を着ているレオンと並べば、その美しさは格別で、社交界で評判になるのもよくわかる。
「イザベラのことなら、なんでもわかるんだよ。騎士の訓練も、ともに乗り越えたし」
レオンは、何故か顔を赤くしているイザベラの顔を覗き込むと、笑顔を浮かべた。
それは、サヤには向けることのない優しい笑顔だ。
イザベラに心を許し、すべてを預けているような笑顔は、サヤの心を大きく揺らした。
レオンとイザベラのこれまでの関係を見せつけられたようで、疎外感を覚える。
誰も、ふたりの間に割って入ることができない強い絆が、見えた。
「な、なによ。私だって、レオンのことならなんでも知ってるわよ。立太子の儀の前日、王家の森でずっと待ち続けて、結局会えなく……」
「おい、どうしてそれを知ってるんだよ」
「ふふっ。どうしてでしょうね。ちなみに最初に気づいたのはジークなの。雨に濡れて帰ってきたレオンに、呆れかえってたし」
何を思い出したのか、お腹を抱えて笑い出したイザベラを前に、レオンはわなわなと震えている。
「まあ、いまさら怒らなくてもいいでしょ。結局、レオンの望み通りになったんだから」
イザベラは、笑いをこらえようと浅い呼吸を繰り返した。
「私はレオン王太子に、というより、王家に仕えるルブラン家の人間だもの、次期国王の頼みを聞かないわけにはいかないのよね」
ふっきたように明るく話すイザベラに、レオンは申し訳なさそうに、うなずいた。