王太子の揺るぎなき独占愛
イザベラは、運動神経の良さと男性顔負けの気の強さから、早々に女性騎士になるべく訓練を始めていた。
王家の森の仕事を学び始めたサヤとの接点は少なく、ルブラン家の集まりでも顔を合わせる機会はあまりなかった。
それでも、たまに会ったときには気安く声をかけ、サヤをかわいがってくれた。
ルブラン家の象徴ともいうべき立場をわきまえ、決して気を抜いたところや弱い部分を見せない。
そんなイザベラが、体を震わせ泣いている。
それほどまでにレオンのことが好きなのだろうか。
サヤが王妃に選ばれたことで、レオンとの関係に悩み、泣いているのだろうか。
「だけど、なんだか違う……」
イザベラを見つめるレオンの表情は決して暗いものではなく、彼女の涙を面白がっているようにも見える。
彼女の背中を静かにたたく手の動きは規則正しく、まるで子どもをあやしているようだ。
「そろそろ会議に戻ろう。ラスペードの諸侯たちは今日中に帰国する予定だからな」
「……了解」
レオンの言葉に、イザベラは顔を上げると、レオンから離れ、何度か深呼吸を繰り返した。
「やだな、泣き顔、不細工だよね」
「おまけに泣き声。だけど、相変わらず美しい女性騎士だ。少し弱々しい方が男にもてるんじゃないか?」
「は?」
くすりと笑ったレオンのお腹に、イザベラは握りこぶしをお見舞いした。
「お、おい、やめろよ。俺は王太子だぞ」
笑い声を上げながら、レオンはイザベラから逃げ、そのまま部屋のドアを開けた。
そしてイザベラを振り返った。
「イザベラ、感謝してる。それと、どうしても気持ちが抑えられなくなったときは、いつでも俺を頼ってくれ。いいな」
「……感謝はどんどんして。だけど、これ以上の心配はいらない。私は強いから」
相変わらずの涙声にも関わらず、そう言って胸を張る毅然とした態度のイザベラは、普段通りの彼女だった。
そして、颯爽とレオンの横を通り過ぎ、部屋を出て行った。
レオンはその後ろ姿に苦笑しながら、静かにドアを閉めた。