王太子の揺るぎなき独占愛
「どういうこと……?」
部屋から遠ざかるふたりの足音を聞きながら、サヤは立ち上がった。
「あのふたり、どうして突然ここに? それに会議? そんな予定あったかな」
イザベラの予定は知らないが、レオンは今日、城下におりていくつかの工場を視察する予定だと聞いていた。
今日も会えないだろうと寂しく思っていたが、突然予定が変わったのか、ラスペードから来た諸侯たちと会議があるようだ。
サヤは作業台に端切れを並べながら、レオンとイザベラが抱き合っていた姿を思い出す。
お似合いのふたりが寄り添う姿はとても美しく、圧倒された。
やはりレオンはイザベラが好きなのだろうか。
何度考えても、答えが出せない。
「あー、もう。突然この部屋に入ってこないでよね……。鍵でもかけておけばよかった」
イザベラは、泣き顔もきれいだった。
手元の端切れと刺繍糸を見ながら、そういえば、イザベラの刺繍の腕はジュリアに負けないほどだったと思い出す。
舞踏会でレオンと踊る姿は見たことはないが、ぴったりと息の合ったステップは人々のため息を誘うほど美しいと聞く。
考えれば考えるほど、イザベラの方がレオンの隣に並ぶにふさわしいと、サヤは思う。
「今日は、帰ろう……」
今日は王妃教育の予定は入っていない。
それに、ジュリアの体調も心配するほどでもない。
サヤは刺繍の練習に必要なものを手に取り、持ち帰ることにした。
王妃にはイザベラの方がふさわしいと思いながらも、刺繍の練習をしようとする自分に苦笑する。
そして、あきらめが悪い自分に、呆れた。