王太子の揺るぎなき独占愛



「サヤは飲まないのか?」

 レオンはサヤの手からボトルを受け取ろうとしたが、サヤはボトルをそっと逸らし、首を横に振った。

「十八歳になったので飲んでもいいのですが、ひと口飲むだけで体が熱くなるんです。肌も赤くなってぼんやりとしてしまうので……遠慮しておきます」

 そう言って自分の席に戻ろうとしたサヤの手を、レオンが掴んだ。

「え、殿下……?」
「ここに座れ」」

 レオンは立ち上がると、自分の隣の席にサヤを座らせた。

「あの、どうして」

 戸惑うサヤになにも答えず、レオンは向かいのサヤの席に置かれていた料理をすべて、自分の隣に改めてセッティングした。
 あっという間に目の前に並んだ料理を見て、サヤは何度も瞬いた。

「ここで、いただいてもいいのでしょうか?」

 ためらいながら問うサヤに、レオンは「もちろん」と当然のように答える。

「この方が、距離が近くて話しやすい」
「そう、ですね。近くて……うれしいです」

 はにかむサヤの横顔に、レオンは目を細めた。

 美しく、その場にいるだけで周囲を和ませる雰囲気を持つサヤだが、婚約以来、いっそうキレイになった。
 そう思うのは自分の勝手な思い込みだろうかと、レオンは苦笑する。

 それでも、サヤの表情や物腰が変化しているのはたしかだと感じていた。


< 164 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop