王太子の揺るぎなき独占愛
婚約してすぐのころ王城を訪れたサヤは、普段以上に遠慮がちで、周囲からの祝いの言葉や視線に緊張し、ぎこちない笑顔で応えていた。
レオンはその硬い様子が気になり、もっと楽にしてやりたいと思っていたが、すぐにはどうすることもできなかった。
森にいるときのようなサヤの生き生きとした笑顔を、王城でも、そして自分にも見せてほしい。
焦らず時間をかけてサヤの心を手に入れ、政略ではない、真実の結婚にしようと考えていたが、サヤが拒まないことをいいことに、会えば抱き寄せ、キスをして、そのあと後悔することも多かった。
サヤにはレオンとの結婚を拒む権利はないのだ、レオンがなにをしようが受け止めるしかない。
その現実を思えば、サヤがキスに応えるのは王太子には逆らえない立場ゆえのことなのだろうかと、落ちこむこともあった。
それでも、今レオンのとなりでスプーンを持ち、「スープ、いただいていいですか?」と極上の笑顔で首をかしげるサヤを見れば、この結婚をイヤイヤ受け入れているようには思えない。
テオとのキスにもときめいているのではないかと、うぬぼれそうになる。
厳しい王妃教育のせいか、もともと引き締まっていた体はさらにシャープになり、顔は以前にもまして小さくなった。
そのせいで、大きな瞳がさらに大きく見え、美しさに磨きがかかっている。
「サヤ……」
スープ皿を手元に寄せ、バターの香りを楽しんでいたサヤは、レオンの声に振り向いた。
「この肌が、赤くなるのを見たい」
「あ、あの……?」
レオンはワイングラスを手に取り口に含むと、グラスをテーブルに置いたと同時に両手でサヤの体を抱き寄せた。
そして、自分の膝の上で横抱きにして、唇を重ねた。
「ん……っ」
突然視界が変わったかと思えばレオンの膝の上で抱かれ、そして唇に熱を感じる。
サヤは反射的に逃げようとしたが、レオンはそれを許さない。
それどころか、レオンはサヤの唇をこじあけると、口移しでワインを飲ませた。
「ん……っ」