王太子の揺るぎなき独占愛
突然口の中に広がったワインの香りにむせそうになるが、逃がさないとでもいうようにレオンに唇を押し付けられ、ゴクンと飲み込んだ。
飲み切れなかったワインがサヤの口もとから零れ落ち、レオンの唇がそれをたどる。
「どうして……」
「どうして? わからないのか?」
サヤの顔を、レオンの唇が探るように動く。
これまで何度かキスを交わし、互いの体温を感じた。
結婚式を終えるまではサヤの体を奪うわけにはいかないが、やはり愛しい女性を腕に抱けばすべてがほしくなる。
ここしばらく会えず、イザベラの件で悩んでいた反動もあってか、レオンはサヤの体を離せない。
無理矢理自分の膝の上に乗せ、サヤの同意もなしにワインを口移しで飲ませた。
決して誉められた行為ではないが、我慢できなかったのだ。
会うたび美しく変化していくサヤの姿にレオンは驚かされていたが、今日、久しぶりに会ったサヤからは、美しさに加え、女性としての艶やかさと強さを感じた。
これまで見せていた不安に揺れる姿は影を潜め、凛とした表情と立ち姿、そして、レオンをまっすぐに見つめる瞳。
これまでと違うサヤの姿を見た瞬間、レオンはサヤへの愛情を抑えることができなくなったのだ。
愛しい。そして、このまま抱きたい。
いっそ自分の部屋に連れて行き……。
我慢しなければならないと思えば思うほど、その思いは強くなる。
おまけに、サヤは自ら体を寄せ、レオンの胸にすべてを預けてきた。
それだけでなく、サヤの両手がレオンの背中に回り、ぎゅっと抱きついてくる。
「サヤ……」
レオンはくぐもった声でつぶやくと、強くサヤを抱きしめた。
サヤが自らレオンに近づこうとするのはこれが初めてだ。
レオンは口元が緩むのを抑えられない。