王太子の揺るぎなき独占愛



 サヤが焼くパイは、それはもう見た目も味も抜群で、ジュリアの胃袋をつかむのは簡単だった。

 しかし、サヤと同じように材料を合わせ、焼いてみても、ジュリアが作ったものは見た目も味もいまひとつ。
 どこがどう違うのだろうかと頭を悩ませている。

 結婚式まであと二週間だ、そろそろ完璧なものを作りたいと、ジュリアも四苦八苦している。
 本を読み返しながらため息をつくジュリアに、サヤは肩をすくめた。

「ジュリア様が作られたお菓子なら、それだけでステファノ王子は大喜びで食べてくださいますよ」

 サヤもまた、からかうようにつぶやいた。

 サヤもジュリアも、婚約者から溺愛される幸せな毎日を送っている。

 刺繍やお菓子の出来にうるさく言う婚約者ではないのもよくわかっているが、愛するひとには胸を張れるものを、とそれぞれ頑張っているのだ。

「やっぱり、生地の混ぜ方がだめなのかしら……」

 ジュリアがつぶやけば。

「痛いっ。どうして布じゃなくて指を刺しちゃうのかしら……」

 サヤも顔をしかめ、ため息をつく。

 ふたりは肩を落とし、うなだれるのだが、ジュリアが焼いた洋ナシのパイをこっそり味見したジークは、そのおいしさにお世辞抜きで驚き。

 そして、夜中遅くまで刺繍の練習をしながら寝落ちしてしまったサヤを気遣うレオンは、サヤの手にあるビオラの刺繍の見事な出来栄えに目を見開いた。


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