王太子の揺るぎなき独占愛
「あの……?」
「大丈夫ですよ。シオン様は温室でお待ちですので、お急ぎくださいませ」
ジークは戸惑うサヤを励ますように言葉を続けるが、いつものおおらかな様子と違った強引な口調にサヤはさらに不安を覚えた。
「……わかりました。あ、あの、ジュリア様は?」
「王妃殿下は、サヤ様おひとりをお呼びです。それに、ジュリア様は虫がお嫌いですので、温室にはお近づきになりません」
「それはそうだけど」
たしかにジュリアは虫が苦手で温室には滅多に近寄らないのだが。
「わかりました。あの、このまま行けばいいのでしょうか」
「はい。このままお願いします。あ、履物を変えていただいた方がよろしいかと」
ジークはそう言って、傍らの侍女に視線を向けた。
すると、侍女は手にしていたブーツをサヤの足元に置いた。
それはサヤが温室で作業をするときに履いているブーツだった。
わざわざサヤのブーツまで用意して迎えにくるほどだ、よっぽど急いでいるのかと、サヤは焦った。
「王妃殿下とお話をされたあとで、昼食をご用意いたします」
ジークの言葉に、サヤはジュリアのことを思い出し、部屋の中を振り返った。
「あの、ジュリア様、王妃殿下がお呼びのようなので、行ってきます」
突然のことにジュリアも驚くだろうと思っていたが、予想に反してジュリアからはあっさりと「行ってらっしゃい。私は久しぶりに刺繍に励むわ」と大きな声が返ってきた。
「え……?」
そのあっさりとした言葉に、サヤは拍子抜けした。