王太子の揺るぎなき独占愛
ジークのあとに続き、サヤは温室に着いた。
青空が広がり日差しがたっぷりと注ぎ込む庭園を横切り、隣接した場所にある温室では、あらゆる花が育てられている。
ルブラン家本家出身の王妃シオンは、結婚前はサヤ同様王家の森の世話をしていた。
サヤのように森のことに詳しく、薬草については誰よりも深い知識を得ていた。
生涯を森とともに生きると決めていたが、ラルフに見初められ王家に嫁いだが、今でも森の仕事が忘れられず、温室で植物や薬草を育てている。
シオンが好きなものばかりが育てられている温室はいつも色鮮やかで、花の香りでむせ返りそうだ。
「それでは、王妃殿下がお待ちですので」
ジーク温室の扉を開け、中に入るようサヤを促した。
「えっと……私ひとりですか?」
不安げなサヤの声に、ジークはうなずいた。
「のちほどお茶をお持ちしますので、王妃殿下とゆっくりとお話ください」
「お話と言われても……」
婚約以来、王妃からお茶に呼ばれたりジュリアとともに城下で羽根を伸ばしたりと楽しい時間を過ごすことはあったが、こうしてサヤひとりが改めて呼ばれることはなかった。
王妃を怒らせるようなことをなにかしたのだろうかと気になるが、どこか緊張しているジークの様子にも違和感を覚える。
普段なら、サヤの不安な心情をくみ取って優しい言葉をかけるのだが、ここにくるまで何も言わず、笑みを浮かべた表情も、強張っているように見える。
「さ、どうぞ」
サヤはゆっくりと温室の中に足を踏み入れた。
扉が静かに閉まる音を聞きながら温室の奥を覗き込むと、サヤの姿に気づいたシオンがにっこりと笑っていた。
「失礼いたします」
深くお辞儀をし、温室の奥で待つシオンの元に歩を進めた。