王太子の揺るぎなき独占愛
「急に呼び出してごめんなさい。王妃教育もひと段落ついたと聞いたんだけど」
シオンの優しい声に、サヤは緊張感を少しだけ解いた。
「はい、先生たちのおかげでどうにかひと区切りをつけることができました」
「それは良かったわね。私はサヤのようにできがよくなくて、王妃教育の最中は逃げ出したくて仕方がなかったわ。夢にまで礼儀作法の先生が出てきて叱られていたくらいよ」
そう言って朗らかな笑い声をあげるシオンは、まだ四十八歳の若さだ。
十七歳で王家に嫁ぎ、王子と王女に恵まれたのだが、喘息という持病を持つ彼女の出産は、命がけだった。
無事に出産を乗り切ったのはラルフの深い愛情のおかげだと、国民の誰もが口を揃えるほどラルフとシオンは仲がいい。
落ち着いた美しさは衰えることなく、物腰の柔らかさとのんびりとした性格も相まって、いつも温かな雰囲気に包まれている。
今も防寒用のくるぶしまでの長衣を着ているが、色白の肌に長衣の淡いピンクが映え、まるで天女のように見える。
サヤがその美しさに見とれていると、シオンが温室の隅にあるベンチを指さした。
「あとでお茶が届くと思うんだけど、それまであちらでお話しましょう」
「は、はい」
先を歩くシオンのあとを、サヤはついて歩いた。
お話と言われてもいったいなんの話をすればいいのだろうと不安は尽きないが、取り立てて普段と変わったところが見えないシオンに、ホッとした。
国王代理としてレオンが公務の多くを引き受けている今、王妃殿下にも時間ができただけなのかもしれない。
時間に余裕ができ、話し相手に呼ばれたと考えれば納得もできる。