王太子の揺るぎなき独占愛
「サヤ様の足手まといになるだけだと思いますが。わかりました。外で待機している殿下の警護担当の騎士たちにも力仕事は手伝わせて、作業を終えてくださいませ。陛下には私が伝えておきます」
「頼むぞ。今日の公務はすべて終えているからなにもないはずだが。かといって、つまらないことで呼び戻すなとも言っておいてくれ」
「そんなこと、私の口からは申し上げられません」
「ちっ。役に立たないな。じゃ、俺は楽しく森で働いてるとだけ伝えろ。それだけで陛下が俺の邪魔をすることはないはずだ」
念押しするように強い口調で話すレオンに、ジークは天を見上げ、視線をさまよわせる。
「承知いたしました。レオン殿下の未来のために、ここは静かに見守ってくださるよう、お伝えしておきます」
「よし。頼むぞ」
呆れた顔を見せるジークを無視し、レオンは明るい表情でうなずいた。
ふたりのやりとりを見ていたサヤには、何の話をしているのかよくわからない。
ただ、森の仕事に王太子を連れ出すわけにはいかないことだけはわかる。
「あの、殿下」
サヤが自分ひとりで大丈夫だと言おうと口を開いた途端、レオンの手のひらがサヤの口をふさいだ。
「なにも言うな。俺だって王族のひとりだ。王家の森についての知識は深いぞ。ルブラン家の女性には負けるが、そこそこの働きはするから期待しろ」
ジークに向けていた声と違い、甘くささやくような声が耳元で響き、サヤの顔がかっと赤くなった。
レオンの大きな手で顔が隠されていてよかった。
レオンが森のことに詳しいとは聞いているが、それでもやはり、樹木を固定するために縄を張ったり、倒木に育っている苔の状態を確認したりという仕事をさせるわけにはいかないのだ。
「やっぱり、王太子が森の仕事をするのは納得できないか?」
サヤの目からなにかを感じたのか、レオンは苦笑する。
サヤはこくこくとうなずいた。