王太子の揺るぎなき独占愛




「頑固だな。というか、仕事に対して真面目だな。そこがいいところだが、今回は俺も一緒に働く。冬も近いし、できることは早めに済ませておこう」

 サヤに言い聞かせるようにそう言って、レオンは再びジークに顔を向けた。

「とりあえず腹が空いたから、サンドイッチでも作ってくれとハンクに言ってくれ」
「はいはい。承知いたしました。騎士たちの分も用意させますので、しばらくお待ちください」

 ジークはあきらめた声でそう言って部屋を出ようとしたが、ふとなにかを思いだしたように振り返った。

「サヤ様、申し訳ありませんが、このレオン殿下のことを、よろしくお願いいたします」

 心からそう思っているように熱のこもった口調で話すジークに驚き、サヤは思わず後ずさった。
 それを、レオンの手がぐっと引き戻す。
 レオンを見れば、優しい笑みを浮かべ、じっとサヤを見ている。

 わけがわからない。

「あの、ジーク様……」

 レオンとジークを交互に見ながら、サヤは混乱する頭を落ち着かせようと浅い呼吸を繰り返した。

「では、ハンクに伝えてまいりますので。サヤ様、よろしくお願いいたします」

 サヤは深々と頭を下げるジークにかける言葉も見つからず、呆然とその背中を見送った。

 なぜこんなことになったのだろう。

 王家の森の西側にあるサヤが住む屋敷から、森をのんびりと三十分ほど歩いてここまできた。
 森にいるだけで心が弾みわくわくするが、さらに今日は森の中にある離宮に泊るのだ。歌を口ずさみ、ときどき駆け足で森の空気を堪能しているときに、こんな展開は想像もしていなかった。


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