王太子の揺るぎなき独占愛
「そうそう、ジュリアがお菓子作りを教わっているそうね」
楽しげに話すシオンの表情は、ジュリアを思う母親の顔をしていた。
公務の合間に時間を作っては子どもたちとの時間を大切にしていたと、サヤはレオンから聞いている。
若いころ、今よりも喘息の発作に苦しむことが多かったシオンは、万が一のことを考え、精いっぱいの愛情を家族に注いだ。
次に発作が起きたら命が危ないと、医師から何度も言われ、そのたびラルフの愛情は深まっていった。
絶対に死なせはしないと言ってはダスティンを城に呼び、シオンのために薬草を用意させた。
もちろん王家専属の医師の的確な治療によって発作を乗り越えたのだが、ラルフとダスティンの友情による力も大きいのだ。
「私が体調を崩すことが多かったから、お菓子作りをする時間を持てなくて。ジュリアにも寂しい思いをさせたし、私自身、お菓子作りなんてできないのよ」
ふふっと笑うシオンは、まるで少女のようにかわいらしい。
ベンチに浅く腰かけ、傍らに立つサヤに肩をすくめた。
「ステファノ王子のために洋ナシのパイを作ってあげると言っていたけど、どうかしら、上手に作れるのかしら」
「はい、何度も練習されて、とてもおいしいパイを作れるようになりました」
シオンはサヤの言葉にうれしそうに目を細めると、サヤを隣に座るよう手招いた。
「これ、ジュリアが作ってくれたのよ」
シオンは身にまとっている長衣をそっと撫でた。
「とても素敵な長衣だと思っていましたが、ジュリア様が……」
淡いピンクの正絹で仕立てられた長衣は、裏地との間が綿詰めされとても温かそうだ。襟元には白いレースがあしらわれ、アクセントになっている。