王太子の揺るぎなき独占愛



「ジュリアが城下で織った絹糸を使って仕立てたらしいけど、本当、上手よね」
「本当に、羨ましいくらい器用でいらっしゃいます」
「ふふ。これ、幸せになる娘からの置き土産って言っていたわ。陛下には水色の長衣を仕立ててくれたんだけど。陛下ったら号泣しちゃって、大変だったわ」

 子煩悩のラルフが号泣する姿は容易に想像でき、サヤも笑い声を漏らした。

 製糸業が盛んなファウル王国でも、絹糸の生産は始まったばかりだ。

 鉱物に頼るばかりでなく新しい特産品を作ろうという動きが盛んになっている中、ジュリアは絹に目を付けたのだ。

 養蚕業に力を入れ始めて数年、ようやく一定量の絹糸を生産できるようになった。

 その後絹糸を使って正絹を織るのだが、まだ大量に作ることは難しく、その加工技術の向上とともに、今後の課題のひとつとなっている。

 この長衣は両親への置き土産ではなく、ファウル王国を愛するジュリアが国のために残してくれたものだろう。

 そういえば、とサヤは思い出した。

 婚約が正式に調った日、温室に逃げ込んだサヤを迎えに来たレオンも長衣を着ていた。
 あれもジュリアが仕立てたものに違いない。

 ステファノ王子とお揃いのガウンを編むだけでなく、長衣まで。

 忙しい中、いつの間に作ったのだろう。
 サヤは、ジュリアにはまだまだ敵わないと実感した。

「本当に、ステキですし、王妃殿下にお似合いです」
「そう? ラスペードでもいろいろ作って、愛されればいいんだけど」

 シオンの言葉にジュリアへの愛情が感じられ、サヤも自分の母親、カーラを思い出した。


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