王太子の揺るぎなき独占愛



 王城に居を移す日が近づくにつれて寂しがり落ちこむダスティンに対して、普段通りの明るく朗らかなまま接してくれたカーラ。

 家を出るその日までいつもと変わらない日常をサヤに送らせてくれたカーラだが、王家という別世界に娘を送り出す不安はどれほどだっただろうか。

 夜中にこっそりと泣いている姿を見たとき、サヤも自分の部屋で涙を流した。

 翌朝何事もなかったように朝食を作っているカーラの背中に抱きついてしまったことを、サヤは一生忘れないだろうと思っている。

「ジュリア様なら、きっと幸せになられますよ」

 サヤはうつむくシオンを励ますようにそう言った。

「そうね、きっと幸せになるわよね」
「はい。ステファノ王子が全力でジュリア様を大切になさいます。それこそジュリア様が面倒だと思うくらいに」

 ステファノの溺愛ぶりを思い出したシオンは、肩を揺らし笑った。

「面倒なくらい……。陛下に負けず劣らずの溺愛ぶりだものね。それに、ステファノ王子は第三王子で王位を継ぐわけではないから、少しは安心しているの」

 シオンはそう言った途端ハッとし、サヤに視線を向けた。

「ごめんなさい。第三王子だから安心だなんて言って。サヤは次期国王のレオンと結婚するのに無神経なことを言って」

 シオンはサヤの手を取り謝った。

「だ、大丈夫です。私はレオン殿下と結婚できることを幸せに思っています」

 頭を下げるシオンに、サヤは慌てた。

 シオンがジュリアを思い口にした言葉は理解できる。
 母親ならば、苦労するとわかっている王太子に嫁がせるよりも王位に関係のない王子に嫁がせたいと思うのは当然だ。
 それに、シオン自身が王妃としての苦労を経験しているのだ、ジュリアの結婚に安心するのもわかる。



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