王太子の揺るぎなき独占愛
「あの、気になさらないでください」
結婚によって経験するにちがいない苦労をもふくめ、レオンの妃になることを決めたのだ。第三王子と結婚するジュリアを羨むこともない。
「それに、王妃殿下のお気持ちも、わかります。私の母も、同じような思いで私を心配していると思います。ですが、母は明るく私を送り出してくれたので、私も頑張るつもりです」
サヤはそう言って、恥ずかしそうにうつむいた。
「がんばるつもりではいるのですが、まだまだ王妃にふさわしいとは思えないのですが」
次第に小さくなるサヤの声がかわいらしく、シオンは目を細めた。
「レオンだってまだまだ国王にふさわしいとは思えないわ。ラルフに追いつくにはたくさんのことを経験しなきゃならないもの。だから気にしなくていいのよ。私なんて、結婚式の日に寝坊して前王妃殿下にどれだけ叱られたことか」
「寝坊、したんですか?」
シオンの告白に、サヤは驚き顔を上げた。
「そうなの。あまりにも緊張して眠れなくてね。明け方ようやく寝入ったと思ったら寝坊しちゃった。優秀な侍女たちが手際よくドレスを着せてくれたおかげで間に合ったの」
明るくなんてことのないように話しているが、当時のシオンはかなり叱られ落ち込んだはずだ。
サヤは、前王妃殿下は、なにごとも完璧にこなす厳しい方だったと、レオンが話していたことを思い出した。
「あのときの陛下は格好よかったのよ。なにがあっても私を守ると言って、一緒に頭をさげてくれて。今思い出してもドキドキするほど素敵だったの。あ、ごめんなさいね。ふふ、きっとレオンも同じよ。サヤになにがあっても全力で守ってくれるはず」
「は、はい……私もそう思います」
ぽっと頬を赤くし、サヤはつぶやいた。
レオンからかけられた甘い言葉の数々を思い出し、どうしようもないほどドキドキする。
シオンはそんなサヤの様子に安心したように息を吐き出した。