王太子の揺るぎなき独占愛



「王妃に選ばれた女性は、結婚前に毒を……王が死を望んだときのため、安らかにその命を終えさせる毒を用意しなければならないの。その作り方は王妃だけが知っていて、次の王妃に伝えなければならないの」
「そんな、冗談、ですよね」

 サヤはシオンの言葉が信じられず、目の前の袋を見つめた。

「冗談ではないの。これは、私が結婚前に陛下のために作った毒なのよ」
「嘘……」

 まさか陛下のための毒を作ったなんて、信じられるわけがない。
 日々、お互いがお互いを生かしているような関係を見せつけられているというのに、サヤには冗談だとしか思えない。

「まさか……」

 サヤは乾いた笑い声をあげたが、ぶれることなくサヤを見つめる瞳を見れば、シオンが冗談を言っているわけではないとわかる。

「冗談でもなんでもないわ。この中に入っているのは、結婚前に私が調合した毒が入っているのよ。それも、陛下のために作った毒が」

 当然、サヤが驚くことを予想していたのだろう、シオンの声も表情も落ち着いている。
 手の上の巾着袋をサヤの目の前にかざすと、覚悟を決めたように口を開いた。

「ここに来てもらったのは、サヤにこの毒の話をしなければならなかったからなの」
「毒……」
「そう、サヤがレオンのために作らなければならない、毒について」

 敢えてそうしているのか、感情を含まない淡々としたシオンの声を聞けば、サヤはこれは夢でも冗談でもないのだと、感じた。

 レオンのための毒。
 それはレオンの命を奪うということで……。

「あ……あ、そんな」

 想像しただけで、一気に血の気が引き、サヤは気が遠くなるような気がした。



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