王太子の揺るぎなき独占愛
両手で自分の体を抱きしめ、守るように体を丸めた。
「信じられないし、つらいわよね」
シオンは目に涙を浮かべ、サヤの頭に手を置くが、その手は小刻みに震え、うまく撫でることができない。
「それでも、王妃としての義務だから、結婚式までに用意しなければならないわ。大丈夫よ、大丈夫。サヤは強いわ。それに、レオンを愛しているのでしょう?」
「はい、もちろん」
体を丸めたまま、くぐもった声でサヤは答えた。
毒ってなんだろう、どうしてレオンに毒が必要なのだろう。
心の中で何度も繰り返す。
シオンの手以上にサヤの体も震えている。
そんなサヤをいつくしむような表情を浮かべ、シオンは話し始めた。
「この毒はね、王家の長い歴史の中でずっと守られてきた習わしのようなものなの。王妃に内定したルブラン家の女性たちが皆経験してきた苦しみでもあるわ」
サヤは、シオンの静かな声に、耳をかたむけた。
「これまで、王妃が作った毒を使って命を終わらせた王はいないの。でもね、このさき戦が起こったら、王は命を落とすかもしれない。それは、殺されることもあれば、自ら命を絶つ場合もある」
サヤの体がピクリと震えた。
それに気づいたシオンは顔を苦しげにゆがめたが、再び話し始める。
「自ら命を絶つなんて、決してしてはいけないことだけど、王という立場を考えたとき、そうせざるを得ない場合もないとは言えないでしょう? そのとき、王妃の傍らで、王妃が作った毒で……命を終えられるように、用意しておくの」
シオンはそこで言葉を区切りると、いつの間にか頬を流れていた涙をぬぐった。
自分が前王妃から毒のことを教えられたときの苦しみを思い出したのだ。
思い出せば今でもつらい。