王太子の揺るぎなき独占愛




「心からレオンを愛しなさい。そしてともに国のために力を尽くしなさい。これだけ。ね、簡単なことでしょう?」

 シオンが今口にしたことは王妃として当然のことで、これまで意識したことはない。
 国王に即位したレオンを愛し、傍らで支え続ける。
 そして、ファウル王国の平和と発展のためにこの身を捧げる。

 それは王妃に内定して以来、心に留めていたことで、いまさらどうして、と混乱した。
 それに、王妃教育の中で何度も教えられた言葉だ。

「あの……ほかにはなにかないのでしょうか」

 レオンに毒を使うことなど考えられないサヤは、それ以外になにかないのかと問いかけた。

「残念ながらこれだけよ。でもとても大切で、大変なこと。きっと、サヤが王妃になってみればわかるわ」
「そう……ですか」

 サヤはシオンの手にある毒の小袋を見つめた。
 どう見ても、お守りだとは思えない。
 毒はやはり毒でしかなく、レオンの命を絶つ忌まわしきものでしかない。

 シオンはサヤの気持ちを推し量るように「大丈夫?」と声をかけた。
 サヤがためらいながらもうなずくと、シオンは再び長衣の内ポケットに手を差し入れ、なにかを取り出した。

「これが毒のレシピよ」
「え……」

 シオンに手渡されたのは、小さくたたまれた一枚の紙。
 サヤはこわごわと広げた。

「これって……」

 そこに書かれていたのは、サヤがこれまで何度も調合してきた薬の名前だった。
 誰もが一度は医師から処方されたことのある、一般的な薬だ。

 ロザリーの娘マリーが風邪をひいたときにも処方したことを思い出す。
 副作用も少なく、調合する七種類の薬草はすべて、王家の森で育てられている。
 需要が多いことを考え、王家の森の広い範囲でこの薬草は育っている。
 安価なことも手伝い、医師も気軽に処方するのだが、それが毒となるのだろうか。



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