王太子の揺るぎなき独占愛
「これは、調合する機会が多くて、服用するひとも多いのですが……。それに」
サヤは再び手元の紙を見る。
そこには、もうひとつ、薬草の名前が書かれていた。
「リュンヌ……」
信じられない思いでサヤはシオンに視線を向けた。
これもまた、万能薬と呼ばれるにふさわしく、鎮痛効果と消炎効果に優れ、楕円形の葉がかわいらしい薬草だ。
ほかの薬草と違って王家の森でしか育てることを許されていないが、それは、与える水の量や気温に細やかな注意を払わなければならないなど育てることが難しいせいだと思っていたが。
シオンが書いたであろう紙にその名前があるということは、そうではないのかもしれない。
「ここに書かれている薬草はすべて、誰もが手にすることができます。毒は……誰にでも作ることができるということでしょうか」
毒のことなど知りたくない。
そう思う一方で、毒と言われるにはあまりにも人々に知られすぎている名前を目にし、混乱している。
もしもこれらを毒というのなら、医師もサヤも、病に苦しむひとたちに毒を与えていたことになるのだ。
「私は……城下で罪を犯していたのでしょうか」
サヤはことの重大さに気づき、震える声で尋ねた。
良薬といえども副作用はあり、量によっては毒薬にもなる。
ダスティンからも医師からもそう言われ、調合するときには細心の注意を払っていたが。
なにか、間違っていたのだろうか。
息を詰め、色が変わるほど唇をかみしめているサヤの姿に、シオンはくくっと笑い声をあげた。
「サヤ……。あなたがとても真面目だということはジュリアから聞いていたけれど、もう少し肩の力を抜いた方がいいわ」
シオンはそう言って立ち上がると、温室の奥から鉢植えをひとつ手にして戻ってきた。
「リュンヌよ。私ね、このバランスの悪い楕円形がかわいくて、小さなころはよくスケッチしていたの。白い花が咲いたらなおのこと目が離せなくて。王家の森の中で一番好きかもしれないわ」
シオンは鉢植えをテーブルの上に置き、霧吹きで丁寧に水を吹きかけた。
とても愛しげに見つめる瞳はまるで我が子を見つめる母親のようだ。