王太子の揺るぎなき独占愛
「あの、私……。鉢植えのリュンヌは初めて見ました」
珍しいものでも見るように、サヤはリュンヌを見つめた。
「それに、なんだか生き生きとしているような気がします」
「そうでしょう? 愛情を込めて育てているから、リュンヌも応えてくれるの」
「愛情……」
愛情を込めて王家の森であらゆるものを育ててきたサヤには、シオンの気持ちがわからなくもないのだが、だからといって、どうしてわざわざ鉢植えなのかわからない。
それに、毒としてその名が記されていた薬草なのだ、どうしてここまで大切にしているのかわからない。
「誤解したのかもしれないけど、そこに記した七種類の薬草を調合したものはとても効果のあるお薬で、それがなければ治らない病気もあるわよ。もちろん知ってるわよね。それにリュンヌは言うまでもなく有名な薬草で、万能という名にふさわしいということも知ってるわよね」
シオンの言葉にサヤはコクコクとうなずいた。
ルブラン家の人間なら誰でも知っていることだ。
「だったら、罪なんて怖い言葉を口にするのはやめましょうよ。サヤは城下で人気者だったって聞くわよ。罪といえば、そんなサヤを城下の人たちから引き離して王妃として独占するレオンに言ってやりましょう。ね」
楽しげに笑うシオンに、サヤは戸惑った。
「でも、これは毒のレシピだとおっしゃったので、えっと、どういう意味でしょう」
毒だと言われたり万能薬だと言われたり、サヤには理解できない。
「そうよね。私の書き方が悪かったわね」
シオンはそう言うと、鉢植えのリュンヌの葉を一枚抜き取りサヤに手渡した。
そして、戸惑うサヤに意味ありげな表情を見せると、ゆっくりと口を開いた。
「リュンヌはたった一枚でいいの。七種類の薬草と、リュンヌ」
その言葉に、サヤは目を瞠った。
「合わせて八種類の薬草を調合して、毒を作るの。出来上がる毒の量はかなり少ないけど、一度しか使わないから、それで十分なの」
それまで明るい声で話していたシオンだが、次第に表情はくもり、悲しそうにうつむいた。