王太子の揺るぎなき独占愛



 レオンはサヤの右手を取り、青くなっている肌にリュンヌの葉を貼りつけた。
 そして、一緒に持ってきていた布をその上から巻いて固定した。

「すぐにあざも薄くなるだろう」

 満足げなレオンに、サヤは複雑な思いを抱く。

 リュンヌの効能は誰よりも理解しているが、万能薬である一方で、他の薬草との調合次第で毒になる。
 それもレオンの命を奪う毒になる。
 少なくとも今はリュンヌを見たくなかった。

 すると、レオンはサヤを引き寄せ、肩を抱いた。

「リュンヌが気になるんだろう?」

 レオンの問いかけに、サヤは気まずそうに笑った。

「毒だと聞けば、誰でも驚くよな。王妃の義務だとか言われても、すぐに受け入れられないのもよくわかる」

 うんうん、とレオンはうなずいているが、その声が弾んでいるように聞こえ、サヤは視線を上げた。

「今まで何度も手にしていた薬草が毒に変わるんだ、ショックを受けて気を失っても仕方がないよな」

 話す側も聞く側も、決して楽しい話題ではないのに、なぜかレオンは笑っている。
 それも、サヤを気づかっての作り笑顔には見えない。
 心から楽しそうに毒のことを話すレオンに、サヤは違和感を覚えた。

「……殿下? なにかいいことがあったんですか?」
「ああ、あった。かなりいいことがあった」
「そ、それはよかったですね」

 あまりにも幸せそうに答えるレオンに、サヤは戸惑った。



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