王太子の揺るぎなき独占愛



「どうした? その困った顔も捨てがたいが、一番好きなのは、はにかみながら俺を見る顔だな」

 レオンは力強い声で言い切った。
 それはそれでサヤはうれしいのだが、今はそれを知りたいわけではない。

「殿下、毒ですよ、毒。私が殿下の命を絶つお手伝いをするのですよ。なんとも思わないのですか?」

 サヤは次第に感情的になる自分をわかっていても、どうにも止まらなくなっていた。
 いつの間にか、お互いの膝と膝を突き合わせるほどの近い距離までサヤはレオンに近づいた。

「サヤ? こうして近くに来てくれるのはうれしいが、そろそろ夕食の時間だ。とりあえずキスだけでもいいか?」
「キ、キスは今はいいです。私がお聞きしているのは、毒のことで……」

 身を乗り出し一生懸命話すサヤを、レオンは「ちょっと待て」と制した。
 そして、サヤの眉間に浮かぶしわを指先で伸ばし、サヤの唇に軽くキスをした。

「悩みすぎると体を壊すぞ」

 毒のことなど自分には関係がないかのように言っているレオンに、サヤはむかついた。

「レオン殿下、私は嫌なんです。殿下に毒を作るなんて絶対にできない。だって、殿下のことが好きで、これからずっと、一緒にいたいし、殿下の子供を産みたい。王妃としてはまだまだ未熟ですが、それでもずーっと、夫婦でいたいのです」
「俺も、サヤと一緒にいたいし、俺の子どもを産むのはサヤひとりだと決めているぞ。当たり前だろう」

 なにを今さら、とレオンは笑った。

「だったら。だったらもっと自分の命を大切に、真面目に考えてください。長く私とともにいられるように、しっかりと。私が毒を作ってしまったら……もしかしたら殿下はその毒で死んで……」
「死なない」
「……え」
「死なないから安心しろ。たとえ毒があったとしても、それを使う機会はない」



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