王太子の揺るぎなき独占愛
数日後、サヤはリュンヌの準備を終えると、レオンが言うには単なる薬草の詰め合わせを王家の森にある離宮で作り終えた。
その詰め合わせを綿の小袋に注意深く入れて、袋の四辺を丁寧に縫った。
シオンが巾着袋に詰めていたことを思い出し、サヤも不器用ながらも小さな巾着袋を縫い、その詰め合わせをとじこめた。
二度と取り出すことがないよう、リボンで縛る部分はきつく糸で縫い合わせた。
手のひらにすっぽり収まる巾着袋。
あまりにも小さくて、おまけに明るい黄色の布で作ったせいか、毒が入っているとはまるで思えない。
けれど、たしかに毒なのだ。
何度考えても毒を作る意義は見つけられないが、サヤは王妃としての義務だと自分に言い聞かせている。
毒についてとくに不安を覚えていないレオンが、毒について口にすることは二度とないだろう。
サヤもこれ以上毒のことで悩みたくはない。
出来上がった巾着袋を王城に持ち帰ると、サヤはそれを作業部屋にしまった。
ジュリアから譲られた部屋の奥にある、鍵付きの小箱。
本来はジュエリーケースなのだが、ジュリアはキレイなボタンが手に入るたびそこに保管していた。
しっかりとした造りの木製の小箱には鍵がついていて安心感があることからサヤはそこに巾着袋を入れることにしたのだ。
もともと入っていたボタンは別の箱を用意し、すべて移した。
「二度と見ることがありませんように」
サヤは巾着袋が入った小箱を壁面全体に据えつけられた棚の奥にしまった。
サヤが王妃である間に、毒が必要にならないよう、願いながら。