王太子の揺るぎなき独占愛
「王家の森は、国を守る大切な場所だ。王太子である俺が世話をしてもおかしくないだろう?」
「はい……」
うつむくサヤの気持ちを知るはずもなく、レオンは満面の笑みを浮かべた。
サヤは溢れる切なさを忘れるように、こくりとうなずいた。
サヤは、まさか王太子とともに薬草にわらをかぶせるとは想像もしていなかった。
寒さに強い木や花もあれば、弱い種類のものもあるが、薬草の多くは寒さに強い。
わずかな冷気で枯れてしまうものは温室で大切に育てるが、それほどでもない薬草にはわらをかぶせておく。
雪がふれば重みで薬草がつぶれてしまうこともあるが、わらで覆われた土地は比較的温かく、冬を越すのにもってこいなのだ。
サヤは騎士たちが運び入れたわらを順に薬草にかぶせていった。
寒さから守らなければならないだけでなく、太陽の光を通すことも考えなければならず、この作業は簡単ではない。
かなり広い土地を女性だけで終えるのはなかなか大変で、毎年腰が痛くなるのだが、今回はかなり順調に進んでいる。
王族の健康を守るために育てられている何種類もの薬草すべての冬支度を終えるまでにはまだまだ時間がかかるが、明日からは手慣れたルブラン家の顔ぶれがそろい、ぐんと進むだろう。
「姉さん、ここはこれで完了だよな」
しゃがみ込み、歩き回った土地を手でならしながらわらの状態を確認しているサヤに影が落ちた。見上げれば、弟のファロンが立っていた。
彼はルブラン家の男性として、慣例にならって騎士団に入り、王族の警護にあたっている。