王太子の揺るぎなき独占愛
「思ったより火の回りが速いな」
レオンは事務所に向かって両手を上げると、素早い動きで命令を出した。
すると、第二団の騎士たちが事務所の裏側へと素早く動いた。
その様子を、レオンをはじめ、待機している騎士たちが食い入るように見つめる。
「あ、もう一方の窓にも火が……。爆弾に火がつくのも時間の問題ですのでレオン殿下はこの場を離れてください。この距離ですと、怪我だけでは済みません。一刻も早く離れてくださいませ」
フェリックが焦った声に、レオンは首を横に振った。
「大丈夫だ、我が国の騎士たちの働きを信用しろ。それに、大将が我先にと撤退するわけにはいかないだろう?」
落ち着き払っているレオンに、フェリックは唇をかみしめた。
「我が国のつまらない争いごとに巻き込んでしまい、申し訳ございません」
絞り出すような声で謝罪するフェリックに、レオンは眉を寄せた。
「つまらない争い? ああ、ミリエッタ家とかいう公爵家のことか? まあ、そのことについてはおいおい決めるとして。とりあえず、ジュリアが嫁いだら、全力で守ってやってくれ。つまらない貴族の嫉妬に苦しまないように……でも、あいつなら反対に相手を存分に苦しめそうだけどな」
レオンは軽くそう言って笑うと、事務所に視線を戻した。
裏手に回っていた何人かの騎士が姿を現し合図を送っている。
よく見れば、ひとりの騎士の手には太いロープがあり、残り数名は事務所のドアの前に立ち、今すぐにでも押し破ろうと構えている。
レオンは力強くうなずくと、片手を上げ、素早く振り下ろした。
その瞬間、ひとりの騎士は手にしていたロープを力いっぱい引き、ドアの前にいた騎士たちはドアを打ち破って中に飛び込んだ。
あっという間の動きを、誰もがかたずをのんで見守っている。
すると、辺り全体を震わせる大きな爆音が響き渡った。
そのあまりにも大きな音は麓まで届き、誰もがレオンたちの安否を気遣った。