王太子の揺るぎなき独占愛


 
 ジュリアの結婚式にはサヤも参列するのだが、実質、その日はサヤをファウル王国の次期王妃だと周囲に知らしめる日でもある。

 サヤはまだ王族の一員ではないが、当日は国王夫妻やレオンと行動をともにすると、聞かされている。

 式に出席する近隣諸国の王族や有力貴族たちから注目を浴びることは必至で、サヤの緊張感も日に日に高まっている。

 当日着るドレスはすでに出来上がっていて、光沢のあるピンクの生地に白いレースがふんだんにあしらわれているそれは、サヤの両親から贈られたものだ。

 本来なら、娘が嫁ぐ際には実家がウェディングドレスを用意するのだが、王家に嫁ぐサヤにはそれが許されておらず、王家御用達の職人によって仕立てられる。

 国王夫妻はそのことを気にかけ、ジュリアの結婚式で着るドレスを用意してはどうかとサヤの両親に持ち掛け、両親は大喜びで準備したのだ。

 国王夫妻の配慮にサヤも喜び、ジュリアの結婚式を心待ちにしていた。
 レオンも、キレイに着飾ったサヤの姿を想像してはうれしそうにしていた。

「まだ、このドレスを着た姿をお見せしていないのに……」

 サヤはドレスを胸に抱き、こぼれそうになる涙をこらえた。

 サヤが刺繍の途中だと言って作業部屋に駆け込んだのは嘘ではなく、ジュリアの結婚式で着るドレスに小さな刺繍をほどこしている最中なのだ。

 
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