王太子の揺るぎなき独占愛
 


 胸元から豊かなギャザーによってふんわりと広がった裾の部分に、レオンの名前を小さく刺繍しているのだ。

 ドレスと同じピンクの刺繍糸で一文字一文字丁寧に刺繍をほどこしているのだが、もう少しでできあがる。

 それこそあと数針でできあがるのだが、サヤの手は震え、うまく針を刺すことができずにいた。

 王族に加わる覚悟とともにジュリアの結婚式に列席する緊張感は半端なものではなく、少しでも気持ちが落ち着けばと考えて刺繍を始めたのだが。

「結婚式でもなんでも、それこそ毎日でもいいから……」

 レオンが無事に戻ってくるのなら、そんな緊張感なんて大したことではない。
 次期王妃としてふさわしい所作を求められるのなら、どれほど大変で面倒なことでもやり遂げてみせる。
 レオンとの結婚式のあと、バルコニーで手を振ると聞き恐怖を覚えていたが、それこそ何度でも手を振ってもいい。
 これからもレオンとともに過ごせるのなら、それは恐怖でもなんでもない。



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