王太子の揺るぎなき独占愛
ファウル王国のラルフ国王と王妃シオンの仲睦まじさは有名で、前国王によって決められた結婚にも関わらず、今でも周囲がうらやむほど仲がいい。
国内行事にはふたりで出席し、他国を訪問する際ももちろん王妃が同行するが、彼女の美しい笑顔は難しい折衝を有利に進めるのに大いに役立っている。
王妃の出産のときには当然のように国王が立ち会い、生まれた赤ちゃんよりも大きな声で泣き、感激の涙を流したのは有名な話だ。
長きにわたって平和が続いているおかげで農業や漁業、そして採掘事業を始めとする工業にも力を注ぐことができ、年々国力が強化されている。
国王は国民の幸せのための政策を推進する傍ら、他国との関係を強化するため駐在員を相互に派遣し、理解を深めようと尽力している。
『互いを知ることが、平和への第一歩だ』
変わらぬ理念のもと、周辺各国とともに平和な世を継続しようと奮闘する姿は賢王と呼ばれるにふさわしく、この先もその手腕を発揮してファウル王国を率いてくれるだろうと期待されていた。
まだ四十八歳という若さもその期待を裏付けるには十分で、突然王位をレオン王太子に譲ることが発表された途端、国中大騒ぎとなった。
これまでの国王が退位する年齢は、病気でやむを得ず譲位する場合を除き五十五歳前後が多く、レオンが王位を継ぐのも十年後あたりだろうと思われていた。
その時期を見据え、現在十歳前後の娘を持つルブラン家の父親たちの多くは、娘にお妃教育を施していた。
是が非でも娘を王家に嫁がせたいわけではない。
突然王妃に召し上げられても、娘が恥をかかぬようにという親心からの教育だ。
王妃に選ばれれば王城に通い、礼儀作法はもちろん王家の歴史や周辺各国との関係、そして王家の森についてもいっそう深く学ぶことになる。
そのため、事前に準備をし、娘に恥をかかせぬよう、時間をかけて教育を施すのだ。