王太子の揺るぎなき独占愛



 しかし、王が口にした名前はイザベラではなかった。

『ルブラン家の中でも王家の森についての知識が深く、城下での働きにより国民からの人気も高い、サヤを王妃として王家に迎え入れる』

 広間に響く王の声に、静かなざわめきが広がり、貴族の並びの中でも最後尾に控えていたダスティンに視線が集まった。

 サヤの勤勉さや優しい性格はよく知られていたが、まさか彼女が王妃に選ばれるとは誰も思わなかった。

 ルブラン家の本家の生まれでなければ、父親は騎士になれず王家の森の管理に甘んじている。人柄は良いが、いわゆる出世の道から大きく離れたオトコだ。
 加えて、母親は城下の出身。

 貴族と平民との結婚が禁止されているわけではなく、珍しいものでもないが、いずれ国母になる女性が平民の血を引いていたことはこれまでなかった。
 あらゆる状況を考えれば、サヤがレオンの結婚相手に選ばれる可能性はほぼゼロだったのだ。

 その後、国中に国王が退位すると知らされ、その理由に関してあらゆる話が飛び交い、騒がしい日々が続いた。
 そんな騒ぎを鎮めるため、宰相を通じ、国王の言葉が発表された。

 ラルフ王を支えてきたシオン王妃の喘息が悪化し、郊外に居を移して静養することになった。命にかかわるほどでもなく、薬で症状を緩和することはできるのだが、このまま公務に励む日々が続けば悪化することはあれど改善されることはない。
 
 年を重ねればそれだけ体力も落ちる。その前に体を休め、体調を整えたい。

 それはシオン王妃の希望というよりも、彼女を溺愛するラルフ国王の一存で決められたものだ。

 郊外でふたりの時間を楽しみ、愛し合いながら過ごしたい。

 幸いなことに、王太子レオンは優秀で人望も厚い。見た目の良さも相まって国民からの人気もかなり高い。
 とくに女性からの人気はこれまでのどの王にも負けていないほどだ。

 二十五才で即位したラルフ王に対してレオンは現在二十四才.

なかなかいいタイミングだ。



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