王太子の揺るぎなき独占愛
ラルフ王が挙げた退位の理由に、国民たちは脱力しながらも国王らしいと納得した。
どこまで愛妻家なんだと、笑い話にもなっている。
そして、病弱な体ながらも与えられた仕事を堅実にすすめ、王家の森を大切に管理しているダスティンを慕う者は多く、彼の家には祝いの品が途切れることなく届いている。
一方、舞踏会など派手な場には姿を見せず、薬草の知識を生かして王家だけでなく城下の者たちの健康に気を配っているサヤも誰からも好かれていて、王の判断を批判する者はいなかった。
ただ、王家に嫁げば、これまでのように城下に下りる機会は格段に減ってしまう。
子どもたちだけでなく大人までもがそのことを寂しがり、残念に思った。
そんな中、サヤの戸惑いを無視するかのように状況は進み、サヤはその展開の速さに焦っていた。
王妃教育などまったく受けてこなかった自分がうまくやれるわけがない。
王族の健康管理はできても、礼儀作法は知らず、王家の歴史はちんぷんかんぷんだ。
それになにより、レオンがサヤを望んでいるとはとうてい思えない。
国王の命に従うしかないのだろうが、サヤは愛していない女性との結婚を決められたレオンがかわいそうにも思えた。
愛されない王妃になるしかないのだろうか……。
サヤの心は痛み続けている。
レオンとサヤの婚約が調えば、サヤは王城に日々通うことになる。
その日まであと三日となった今、サヤは揺れる心に折り合いをつけられずにいた。
そして、やはり森へと逃げ込んでしまった。