王太子の揺るぎなき独占愛
「いつ見ても、キレイな紫だわ」
サヤは慎重に水を与えながら、その鮮やかな色に見入った。
中心部分は白いが、花びらの外側に向かって次第に濃い紫に変化している。
そのグラデーションの妙に、いつも感心させられる。
一年を通じ長く花を咲かせる花で、王家の森のあちこちに咲いているが、いつ見ても心癒される。
サヤは水分を含んだ土を指先でそっとならしながら、しばらくの間しゃがみこんでいた。
今にも泣きそうに顔を歪め、目には涙が浮かぶ。
午前中、王家から遣わされた宰相によって結婚許可証が届けられた。
もちろんそれは王太子レオンとサヤの結婚許可証であり、サヤの父親ダスティンが受け取った時点で正式に婚約が成立し、王宮では結婚の準備が始まるのだ。
とはいえ、国王が自らの退位とレオンの即位を発表して以来、サヤと両親は何度か王宮に呼ばれ、国王陛下、王妃殿下。
そしてレオン王太子とジュリア王女と食事をともにしている。
そのときの緊張感はかなりのもので料理を味わう余裕などない。
ただただ恐縮し、食事に集中するばかりでレオンと目を合わせることもままならなかった。
そのときウェディングドレスのデザインを相談したり、サヤの体中のサイズを計測されたりしたが、正直、サヤはまだピンときていなかった。
相変わらず、これは夢ではないかと感じていたのだ。
しかし、今日結婚許可証が届けられ、恭しく両手でそれを受け取るダスティンの姿を見て、ようやくこれは現実なのだと理解した。
というより、これ以上夢だと言って自分をごまかすことはできないと認めたのだ。
正式に婚約が成立すれば、すぐに王妃教育が始められ、いずれ王宮に居を移す。
今も王城内にある図書室を訪ね、ジークに選んでもらった歴史書を何冊か借りている。
真面目な性格のサヤは、食事の時間をも惜しむように、借りた本を読み終えた。
それだけでなく、国王陛下の退位式に参列いただく各国要人についての説明を受けたりもした。
これまで触れる機会もなく知らなかったことを学ぶのは楽しくわくわくするが、結婚に向けてますます加速がついた状況に、右往左往している。